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離職率
[リショクリツ]

離職率とは、一定期間における離職者の割合です。厚生労働省の調査による「離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」の計算式が代表的な指標です。離職率に関してよく用いられる統計データには、厚生労働省が実施している「雇用動向調査」や、総務省の「労働力調査」などがあります。

1.離職率の定義や算出方法

離職率とは、一定期間における離職者の割合のことです。離職率の統計データについては、厚生労働省が実施している「雇用動向調査」などがよく用いられます。

●厚生労働省の調査の定義
厚生労働省による「離職者」の定義は、「常用労働者のうち、調査対象期間中に事業所を退職したり、解雇された者」です。また、「他企業への出向者・出向復帰者を含み、同一企業内の他事業所への転出者を除く」とされています。

離職率の算出方法は「離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100」です。厚生労働省が提唱する「常用労働者」の定義は、下記のいずれかに該当するものを指します。

常用労働者の定義
  • 期間を定めずに雇われている者
  • 1ヵ月以上の期間を定めて雇われている者

●総務省の調査の定義
厚生労働省の「雇用動向調査」だけではなく、総務省の「労働力調査」でも離職に関するデータを扱っています。総務省による離職の定義は、「非自発的な離職」と「自発的な離職」の2種類に分けられます。「非自発的な離職」は、さらに「定年又は雇用契約の満了による離職」と「勤め先や事業の都合による離職」に分けられています。

●企業ごとの離職率の定義
企業の離職率は、特定年度の離職者数を期首の在職者数で割ることで算出するケースが多くなっています。この算出方法が用いられている代表的なものとして、企業のデータがまとまった冊子『就職四季報』があります。

参照:
2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況|厚生労働省
令和2年 労働力調査│総務省
就職四季報|東洋経済新報社

2.統計データで見る離職率

厚生労働省が出している離職率の統計データ「2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概況」をもとに、2019年の離職率について詳しく見ていきます。

(1)離職率の推移

2019年における離職率を見てみると、15.6%となっており、前年の14.6%と比べてやや上昇しています。

引用:2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況p.7 図1-1|厚生労働省

これまでに最も離職率が高かった年は、16.4%を記録した2009年です。2008年9月にアメリカの大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破産申請したことで訪れた、世界的な金融危機(リーマンショック)が大きく影響したと考えられます。

(2)産業別離職率

2019年の離職率を、前述の厚生労働省の調査(p.22)から産業別で見てみると、最も離職率が低いのは、「複合サービス事業」の7.9%です。「複合サービス事業」のなかには、郵便局や協同組合が含まれます。

一方、2019年で最も離職率が高いのは、「宿泊業、飲食サービス業」の33.6%です。2018年の離職率は26.9%だったので、1年間で6.7ポイント増加しています。

「宿泊業、飲食サービス業」の離職率が高い理由として、低賃金であることが考えられます。総務省労働局が発表した「産業別常用労働者1人平均月間現金給与額 総数(令和元年)」によると、「宿泊業、飲食サービス業」の現金給与は、125,083円と最も低くなっています。「常用雇用者」のなかには、派遣やパート・アルバイトなども含まれます。

参照:
大分類Q-複合サービス事業|総務省
労働・賃金│総務省統計局

(3)新卒の離職率

近年、若手社員の離職率の高さが社会問題として挙げられることが増えています。

厚生労働省が発表している「学歴別就職後3年以内離職率の推移」によると、2017年(平成29年)の大学卒における3年以内の離職率は、32.8%となっています。

引用:学歴別就職後3年以内離職率の推移|厚生労働省

また、同年における高卒者の3年以内の離職率は39.5%で、大卒者よりも6.7ポイント高くなっています。1年目に退職する割合も高卒者のほうが高く、大卒者では11.6%、高卒者では17.2%です。

高卒者の3年以内の離職率は、2000年(平成12年)の50.3%をピークに減少し、2010年(平成22年)以降はほぼ横ばいで推移しています。大卒者の3年以内の離職率は、2004年(平成16年)の36.6%をピークに減少し、2010年(平成22年)以降は高卒者と同様、ほぼ横ばいで推移しています。

また、「2015年版 中小企業白書」によると、従業員20名以下の小規模事業者の中途採用者の3年目離職率が31.0%であるのに対し、新卒者の3年以内離職率は56.8%と半数を超えています。新卒は他の従業員と比較して離職率が高い傾向にあるといえるでしょう。

出典:
学歴別就職後3年以内離職率の推移|厚生労働省
2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況|厚生労働省
2015年版 中小企業白書│中小企業庁

3.離職率が求職者に与える印象

離職率は、求職者が職場を探す材料の一つになります。求職者にどのような印象を与えるのでしょうか。

(1)離職率が高いときに求職者に与える印象

離職率が高い企業は、求職者から「ブラック企業ではないか」と思われるケースがよくあります。「長時間労働やパワハラなどにより、労働環境がよくないので、離職者が多いのだろう」といった印象を与えるからです。

また、中途採用において同じ職種で何度も求人広告を出していることも、求職者に与える印象を悪くします。「ハードワークで離職率が高いから、同じ職種での求人を出し続けているのではないか」と解釈されてしまう可能性があります。

(2)離職率が低いときに求職者に与える印象

離職率が低い企業は、「長く働きやすい環境」「給与や福利厚生の充実」などをイメージすることができ、求人の際に求職者が集まりやすいといえます。

一方で、「人材の流動性が少ない」といった印象を与えてしまうことも考えられます。そういったイメージを払拭するには、「外部との交流があること」「ジョブローテーションや社内公募などの機会提供が十分なされていること」などを訴求するといいでしょう。

4.離職率が高すぎるときに注意したい点

離職率が高い企業は、どのような問題を抱えていると考えられるのでしょうか。

(1)職場の人間関係がうまくいっていない

日本労働調査組合が2021年3月に実施した「仕事の退職動機に関するアンケート調査」によると、仕事を辞めたいと考えている理由について「職場の人間関係」と答えた人が最も多く、38.6%でした。

人間関係の悪化のなかでも「上司からのプレッシャーが強い」「何かと上司に詰め寄られる」といった原因は、場合によってはパワーハラスメントのリスクを高めてしまうでしょう。職場での権力や地位といった優位性を使い、精神的・身体的な苦しみを与えることは、大きな社会問題といえます。

また、上司との関係性悪化だけではなく、同僚や取引先との関係悪化も、離職の要因として考えられます。

(2)人事評価や待遇に対する不満がある

人事評価や待遇に対する不満も、離職率が高すぎる企業が抱える問題の一つです。先述した日本労働調査組合の調査では、「職場の人間関係」と同率1位で、「評価・待遇に不満」という項目が挙がっています。具体的には、「給与がなかなか上がらない」「評価に不公平さを感じる」「採用時の仕事内容と異なる」などが考えられます。

人事評価や待遇への不満の要因の一つに、働き方改革や新型コロナウイルス感染症拡大の影響でテレワークが急速に普及したことがあります。直接コミュニケーションが取りにくくなったことで、上司が部下の業務プロセスを把握しづらくなっていると考えられるからです。そのため、上司が正確に人事評価をできているのか、疑問に思っている部下が増えています。

(3)長時間労働や残業、仕事量が多い

「労働時間が長い」「残業が多い」「仕事の量が多い」といった業務負荷も、従業員の離職の要因になります。

青山学院大学 経営学部 教授の山本寛氏は、若手社員が仕事に対しネガティブになる大きな要因として、長時間労働を挙げています。近年はワーク・ライフ・バランスを重視する傾向が強くなっており、「仕事だけでなくプライベートも充実させたい」と考える若者が少なくないことも、長時間労働が従業員の離職率を上げる理由の一つです。

参考:青山学院大学 山本寛教授が語る 若手を辞めさせないための「リテンション・マネジメント」 - 『日本の人事部』

(4)将来のキャリアへの不安がある

アデコ株式会社が2018年に実施した「新卒入社3年以内離職の理由に関する調査」によると、新卒者が3年以内に離職した理由として最も多かったのは、「自身の希望と業務内容のミスマッチ」(37.9%)でした。続いて「待遇や福利厚生に対する不満」(33.0%)、「キャリア形成が望めない」(31.5%)という結果になっています。

従業員が抱えるキャリアへの不安は「自身がスキルアップできるか」「経験につながるかどうか」だけではありません。企業の成長性なども、キャリアの不安につながる要因として考えられます。

また、日本労働調査組合の先述の調査によると、従業員の離職動機として「コロナ対策・環境不安」(20.1%)も挙げられていました。新型コロナウイルス感染症対策の状況や、同感染症に対する上司の危機意識にギャップを感じる従業員が少なくないことがわかります。

また、「コロナ対策・環境不安」には、コロナ禍における業績不振による収入減や、テレワークでのストレスなども関連していると考えられます。

参照:
新卒入社3年以内離職の理由に関する調査|アデコ株式会社
【日労公式】仕事を辞めたい人は全体の3割強!退職動機に関する労働調査(2021年4月度プレスリリース)|日本労働調査組合

出典:2019 年(令和元年)雇用動向調査結果の概況|厚生労働省

5.離職率の高まりを抑制するための対策や施策

離職率が高いと、空いた穴を埋めるために採用コストがかかったり、新しく採用した従業員の教育コストがかかったりするなどのデメリットがあります。また、先述したとおり、「労働環境がよくないのではないか」と思われてしまう可能性もあるでしょう。

そうしたデメリットを防ぐために、工夫を施している企業は少なくありません。離職率の高まりを抑制するために、どういった対策や施策を取るべきなのでしょうか。

(1)エンゲージメントサーベイなどによる現状把握

離職率を抑制するには、まず現状を把握することが重要です。職場の現状を把握するには、従業員を対象に、職場環境や働きがいに関する調査(エンゲージメントサーベイ)を行うといいでしょう。

調査を行うことで、従業員の心の中を定量的に把握でき、組織の状態を可視化できます。調査を行うなかで見えてきた従業員の本音を職場改善に反映させれば、モチベーションの向上や組織の活性化にもつながるでしょう。また、調査において部署ごとや勤続年数、役職などでクロス集計することで、要因の分析を行うことも可能です。

調査を行う際は、建前ではなく本音を引き出すため、「調査で適切な職場環境の改善を行い、働きがいを高める」といったように、目的を従業員に伝えます。

やりっぱなしで終わらせないために
エンゲージメントサーベイは、ただ調査を行って終わりとなりがちです。推進には多くの注意点があります。立教大学経営学部教授の中原淳氏の講演レポートから、ポイントを確認できます。

サーベイフィードバックで実現する職場づくり:60分でわかる組織開発の基本|日本の人事部

(2)テレワークや業務効率化など、働く環境の整備

テレワークへの移行や業務効率化など、働く環境を整備することも、離職率を抑制するために有効です。

青山学院大学の山本教授は、若者の職場への定着率を上げるためには、長時間労働の是正をはじめ、労働環境を整備することが重要だとしています。待遇や勤務環境などにおいて、同業他社と肩を並べられるくらいまで、労働環境の水準を引き上げることが大切です。

近年、場所を問わないテレワークなどの働き方を導入し、より働きやすい環境づくりに取り組む企業が少なくありません。テレワークを導入することで、これまで育児や介護によって働く場所に制限のあった従業員も、働きやすくなるでしょう。また、機械やITツールの導入によって業務効率化を図ることも、環境整備には有効です。

参考:青山学院大学 山本寛教授が語る 若手を辞めさせないための「リテンション・マネジメント」 - 『日本の人事部』

(3)ジョブローテーションや社内公募などのキャリア形成支援

キャリア形成支援のための施策も、離職率を抑制するための対策として挙げられます。例えばジョブローテーションや社内公募などの施策や、キャリア相談室の設置など。将来のキャリアパスを描きやすくなることで、従業員のモチベーションは高まり、今の組織で働くことへの動機付けへとつながっていきます。

(4)1on1などの相談しやすい仕組みや制度の整備

相談しやすい仕組みや制度を整備することも重要です。上司との1on1ミーティングや、人事担当者との定期ミーティングなど、従業員が現在抱えている悩みを気軽に相談するための機会を設けるといいでしょう。

特に近年はテレワークなど、一人で業務を進めなければならないシーンが多く、直接コミュニケーションを取れない孤独感から、「うつ病」などメンタルに悪影響が出るケースも見られます。従業員のメンタルを守るためには、テレビ会議ツールなどを活用し、顔を合わせて会話をする機会を作るなど、コミュニケーション方法を見直すことも必要です。

(5)入社前の情報開示やオンボーディングなど採用方法の見直し

入社後のミスマッチは、離職率が高くなる要因の一つです。事前にイメージしていた業務内容と違っていたり、思っていた社内の雰囲気ではなかったりすると、入社してすぐに離職してしまうこともあります。入社前と入社後のギャップを減らすためには、業務や社風について、入社前にしっかりと情報開示することが望ましいといえます。

入社前に、これから一緒に働くチームメンバーと面談を行うことなども有効です。実際に働いている様子をイメージしやすくなるからです。

入社後は、なるべく早く組織になじんで業務が円滑に進められるよう、人事担当者が中心となって支援します。こうした取り組みのことを「オンボーディング」といいます。

一律で実施されている研修のほかに、社内SNSの活用、社内文化や価値観をまとめた資料の配布など、さまざまな取り組みを行うことで新入社員に安心感を与えることが重要です。

(6)退職面談を行い、改善ポイントを抽出する

従業員が退職することになった場合、そのまま送り出すだけでは、離職率の高まりの改善にはつながりません。職場の真の課題は、その場を離れることを決めた人にこそ見えてくるものです。従業員の退職時には面談を行い、可能な範囲で退職する理由などをヒアリングします。面談を行えない場合も、可能な範囲で情報を得ることが重要です。

退職者にヒアリングすることで、現場の実態を把握でき、労働環境の改善につなげられます。また、退職時の対応がよければ、退職者は企業に対して好印象を持つので、口コミなどによる風評被害対策にもなります。

6.従業員の定着率を上げるための取り組み事例

厚生労働省が2017年に発表した「若者が定着する職場づくり取組事例集」から、離職率抑制のための参考となる取り組み事例をいくつか紹介します。

参照:若者が定着する職場づくり取組事例集|厚生労働省

(1)カネテツデリカフーズ株式会社

食品製造業を展開するカネテツデリカフーズ株式会社では、新入社員の人材育成について課題を抱えており、新入社員の3年以内の離職率は50%前後と高くなっていました。こうした状況を改善するため、2017年に新入社員指導員制度を導入しています。先述の「1on1などの相談しやすい仕組みや制度の整備」の実践例として参考にできます。

(2)株式会社コスモスイニシア

新築分譲物件の販売や、中古物件のリノベーション事業を手がける、株式会社コスモスイニシア。同社では、将来的に育児・介護などの時間的な制約を受ける従業員が増加することを見越し、プロジェクトをスタートさせました。それが、短時間勤務者がより働きやすくなるように労働環境を改善する「Work Style Innovation」という働き方改革です。先述の「テレワークや業務効率化など、働く環境の整備」の実践例として参考にできます。

働き方改革は離職率以外にも企業にさまざまな恩恵をもたらします。日本の人事部の事例を集めたページをご覧ください。

「働き方改革」実現に役立つ企業事例10選|日本の人事部

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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